「スマートハウスの普及拡大を目指して」の報告

エレクトロニクスフォーラム「スマートハウスの普及拡大を目指して」

去る5月22日(木)に神奈川県産業技術センター(海老名市)でエレクトロニクスフォーラム「スマートハウスの普及拡大を目指して」が行われました。演台に立たれたのは、神奈川工科大学 創造工学部ホームエレクトロニクス開発学科教授 兼 スマートハウス研究センター所長の一色正男博士です。約1時間半の講演では、スマートハウスビジネスの現状やHEMS認証支援センターの取組み、スマートハウスを普及させるためのポイントなど、当テーマについての様々な情報を説明していただきました。また、神奈川工科大学内にある「HEMS認証支援センター」では、主に中小企業が認証試験に必要な設備を取りそろえ、無償で利用できる環境を提供しています。この設備や使い方などについても詳しく説明していただきました。HEMS(Home Energy Management System:住宅向けのエネルギー監視システム)といった、まだ一般的ではない分野の解説にも関わらず、大変判りやすい説明で来場者の満足度も高かったのではないかと思います。

来場者は66名で、質疑応答の時間には十数件を超える質問が上がりました。一色教授も一つひとつの質問に丁寧に回答してくださり、電気については専門でない筆者も、だいぶ分かるようになりました。その中で、特に興味を持ったのは「海外では有償公開となっていることの多い通信仕様などの規格(ECHONET Lite)が無償公開のため、開発者が参入しやすい」というところです。LinuxにせよiPadにせよ、公開されているからこそ開発スピードや普及速度が上がっている事例はいくつもあります。プログラムを作成するための開発支援キット(SKD)が無償頒布されていることも、新期参入を後押しするのではないでしょうか。また、海外の規格(米国はSEP2.0、欧州ではKNXなど)に比べて、機能(コマンド)のキメ細やかさではECHONET Liteの方がだいぶ上とのことでした。日本の消費者の高い要求に応えるためには、そのキメ細やかさが必要となるのでしょう。一色教授の話にもありましたが、東南アジアなど海外の技術者にもこの規格を知ってもらい、ガラパゴスになることなく、世界中に広がって欲しいものです。

モノがあふれている現代、新製品を開発・販売してもなかなか売れない時代になってきました。製品を作るときは「モノではなく、コトを考えること」が必要なのです。つまり、消費者がどのように生活したいのか考え、それを満たす製品(機能)を提供することが大切ということです。講演の中で興味深かったのが「外出先から遠隔で風呂が沸かせる機能を付けたマンションが、単身赴任者に爆発的に売れた。」というものでした。灯りの消えた部屋に帰ったときに、温かい風呂が沸いていると安心できるというのは、多くの日本人が共感できることではないでしょうか。他にも「シャッターメーカーは、防犯のために不審者が入ってくると、自動でシャッターを動かす機能を付けた」とか、「子どもが帰ってきたら(オートロック型マンションのメイン玄関を解錠)、母親のスマフォに連絡が入り、棟内の友人宅にいた母親が急いで自室に帰って子どもを迎える」といった事例も紹介されました。HEMSとしては本来の使い方でありませんが、日本人は“コト”として有効に使うのが得意だということでしょうか。

HEMS認証支援センターが私たちの地元・神奈川県厚木市に設立されたことはチャンスです。このような仕組みを知ることができる可能性が高いだけでなく、その環境を活かすのも容易だからです。皆様の会社では、こういった新しい可能性ある情報をつかむ体制は整えているでしょうか。企業は、既存事業を足場としてしっかり守って行くことは大切です。既存事業や既存顧客から収益を確保していくのが経営を安定させる基本だからです。一方で、時代の変化や風をかぎ取り、柔軟に対応していくことも必要でしょう。残念ながら、永続的に続く事業は有りません。俗にいう100年企業でも、多くはその時々の環境の変化に合わせて自社を変化させるからこそ生き残っているのです。秋にもHEMSに関するセミナーを予定しているそうです。詳しい情報が入り次第、当NPOのホームページでもお伝えしていきますので、その時はセミナー会場に足を運んで頂き、皆さんの耳で新しい情報を確かめてください。

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Writer:加藤仁史(中小企業診断士) 平成25年 5月25日

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