組織を機能させる『人事ニアリング(R)』の薦め
「機能しない組織は社会的害悪」という言葉は多くの方がお聞きになったことがあると思います。赤字経営を続け挙句の果てには倒産して社員を解雇したり、不良品や粗悪品を販売して消費者に害を与えたり、その様な企業(組織)は?社会的害悪″と言えます。企業の役割には、市場のニーズに応えて必要なものを提供すること、従業員並びにその家族の生計の支えになること、利益を還元して社会に貢献すること、そして企業そのものが存続することがあります。その為には(適正な)利益を上げることが必要です。社会的な貢献をしつつ利益を上げていくことが組織を機能させると言えるのですが、更に突き詰めると?人を機能させる″ことが大事であるところに行き着きます。
如何にその人の持っている能力を引き出し高めるかが人を機能させ、ひいては組織を機能させることになるのですが、最近は利益を出すことにばかりに目が行って、人に対する配慮が疎かになっているが故の出来事が多くなってきたように思えます。企業は、適材適所、人材教育、勤労意欲の向上、適正な人事評価、自己研さん、倫理観の養成など、いろいろな手だてを講じているはずですが、どれだけ機能しているでしょうか。これは、企業の存続にかかわる問題でありますので、経営者はもっと人を機能させることに注目して努力すべきと私は思っています。
では、個々の人を機能させるためには何をすればよいのでしょうか。私は、″相手の立場に立って考えること″?相手(上司は部下)のやり易い環境を整えてあげること″そして?率先して取り組む姿勢を引き出すこと″が重要なことと思います。組織を機能させる効果的な名言は幾つかありますが、私はいつも次の三つを取り上げています。
一、「やって見せ、言って聞かせて、させてみて、誉めてやらねば人は動かじ」
連合艦隊司令長官 山本 五十六
二、「国が何をしてくれるかではなく、国のために何ができるかを考えよう(Ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country)」
米国第35代大統領 ジョン・F・ケネディ
三、「小さな政府と国民の自立」
元英国首相マーガレット・サッチャー
それぞれ、やる気を起こさせ、自立心を持たせる名言で企業の現場にも通用するものです。また、経営学の偉人P.F.ドラッカーは、著書「現代の経営」の中で「人的資源に対する動機付けは、今日のマネジメントが直面する喫緊の課題」と言っております。そこで、組織のリーダーに必要なことは、先ず己に厳しく模範を示す姿勢がなくてはなりません。そして、人を機能させるための手段も持っていなければなりませんが、働きやすい環境を作るためには、仕事の前後・人間関係の上下・取引の左右の関係をコーディネート(調整)する能力が求められます。
また、社員の意見を聞き社員同士のコミュニケーションを活発にさせてアイデアを出させることも大事です。更に、社内だけではなく対外的なPRを行ったり、顧客が満足する体制を整えて活動を継続していく必要があります。
私はこのように、人を機能させ組織を機能させることを『人事ニアリング』と名付けました。「人事」と「エンジニアリング」を併せた造語ですが、人の能力を最大限引き出して組織を機能させるための概念です。また、この人事ニアリングを率先して行うリーダーや、企業の管理部門のスタッフは、『人事ニア』でなければなりません。
私は、具体的な人事ニアリングの手法として次の三つをお薦めしています。
1.コーディネーション(仕事の前後・上下・左右を調整すること)
2.ブレーンストーミング(自由闊達に意見を述べ合ってアイデアを出すこと)
3.サービス・マーケティング(経営・社員・顧客夫々の間でのマーケティング活動)
これら三つの手法を使って、機能する組織を築いて頂きたいと思います。特に経営者の皆様には、己に厳しく、人を見る目を養い、人を機能させる力を持った「名伯楽」になって頂きたいと思います。
注)『人事ニアリング(R)』は著者の商標登録です。
Writer:東 新(中小企業診断士)平成27年10月25日
補助金活用のすすめ
平成24~26年度補正予算「ものづくり・商業・サービス中小企業・小規模事業者 試作開発等支援補助金」(通称「もの補助」)事務局にて本事業を支援する業務に一昨年4月から携わっています。この経験から、補助金について私見を述べさせていただきたいと思います。
まず、補正予算の概要ですが、補助金総額は約1,000億円(24年度)、1社あたりの補助金額は最大1,000万円(補助率3分の2)、単純計算で全国の約1万社が補助金の採択を受けられることになります。対象者は「日本国内に本社及び開発拠点を有する中小企業者」限定です。公募要領に記されているのは、顧客ニーズへきめ細かい対応を中心とした事業計画の策定を、商業・サービス分野においては、「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」(26年度から)、ものづくり技術分野においては「中小ものづくり高度化法」の技術を活用した事業内容であることとなっています。
サービス分野においては、26年度の募集要項に初めてガイドラインが示され、付加価値の向上(新規顧客層への展開等)と、効率の向上(サービス提供プロセスの改善等)で示されたガイドラインについて適合をアピールするものとなっています。計上できる費用は、事業実施に要する、原材料費、機械装置費、人件費、外注加工費等であり、その3分の2について、合計1,000万円を上限として事業完了後に補助金が支給されます。
補助金活用のメリットとして、それまで実施したいと考えていたものの、リスクが大きい、もしくはまとまった金額が必要等の理由でなかなか実施に踏み切れなかった事業への取り組みがあります。例えば、試作をするためには金型が必要だが、外注 すると最低でも数十万、場合によっては数百万のオーダーになりとても踏み切れなかったというようなものです。また、設備投資では、自社で加工が出来なくて外注していた部分を新規機械の導入をすることで、自社のみで対応可能となりQCDの改善につなげられる等です。
また、補助金そのもの以外の効果として、応募するには自社事業の課題を明確にし、その解決方法を事業計画として具体的に示さなければなりません。これは、とりもなおさず、経営革新計画そのものへの取り組みであり、自社経営レベルの一段の向 上が期待できます。すでにこの計画を策定された経験のある企業にとっては、応募する事業内容に従って当該補助金の要求された形式に合致させたれば良いといえます。採択された場合、企業名が公表されますので、一定のレベルにある企業という評価が 得られます。このことを自社のホームページでアピールすることも良いでしょう。イメージの向上に活用できますし、さらには金融機関の信頼性も向上すると考えられます。
応募のためには上記計画書を作成することが必須になります。そんなもの作ったこともないし面倒だなという企業に対しては、地域の金融機関や公的機関、税理士、中小企業診断士等で国の認定を受けた「認定支援機関」が計画づくりをサポートするような仕組みになっています。
最後に、今年26年度の2次募集分の採択者公表が9月中に予定されています。現時点で、来年度(27年度補正)の実施情報はございませんが、本補助金にかぎらず記載内容の骨子は大きく異なりません。この機会に、自社の事業を見直し、各種補助金の積極活用をすることで次の飛躍を目指されてはいかがでしょうか。
Writer:中尾 孝則(中小企業診断士)平成27年9月25日
不適切な処理で生む利益(東芝問題について考える)
●東芝の不適切会計処理問題は、片付いただろうか?
東芝の不適切会計処理問題に ついてですが、この原稿を書いている段階では、第三者委員会の報告書が出て、歴代の社長を含む複数の取締役が辞任したが、「監査法人が知らないはずはない。」とか「第三者委委員会の動機解明が甘い」とか、「社外取締役はお飾りだった」などと まだまだ世間は収まらないようです。不適切な会計上の処理で、あるはずの損失を先送りしたり、ないはずの利益を作り出したりしたと言われる今回の事件、不正会計なのか粉飾なのか様々な議論がある中、経営者は何としてでもより多くの、あるいは 目標として公表した、当期利益を実現することに強くこだわったことが、ことのきっかけであることは明白です。
●経営者がこだわるべき「利益」とは
今回は「利益にこだわることは悪いことなのか?」について、考えてみたいと思います。「そもそも」利益とは一体なんなんでしょう?「商売の目的は、利益を上げることである。」「儲けなければ意味がない。」と言う人がいますが、「利によりて行なえば、怨み多し」とも言いますね。「適正な利益なら良いが、儲け過ぎはいけない。」とわかったようなことを言う人もいますが、「適正」「儲け過ぎ」の基準はどこでしょう。ご存知の方も多いとは思いますが、実は、この疑問についての明快な見識が、かのドラッカー氏によって60年代に示されています。
●ドラッカーは言いました。
企業の目的は新たな顧客を創造することであり、利益とはそのパフォーマンスを測る指標である。同時に、利益は企業が事業を継続していくために必要不可欠な、未来の費用である。と言っています。私は、これを喩えて言うと、利益は試験の点数だと考えています。勉強する目的は学問知識を身につることですが、その成果を測定し比較的公正に評価する方法として、考課 試験を受けその結果を他人や過去と比較します。つまり点数(利益)は、勉強(経営)の成果を評価するための基準です。また、合格点を得ることで次の過程へ進むことができます。つまり、点数(利益)は次の過程(次の事業)への必要不可欠な要素でもあるのです。考課試験は万能ではありませんが、おおよそ勉強の成果を示していると期待できます。しかし、たまたま「山」が当たっただけのこともありますし、今年の問題は特別難しかった、なんてこともあり得ますが、まあ、いろいろ工夫しながら、利用され続けています。進学や進級をするためには、合格点が必要です。したがって、自ずと勉強は、試験の点数を稼ぐことに向きがちです。しかし、勉強の実を上げずに(顧客の新たな価値を創造もせずに)、試験の点数(利益)を追い求めるのは、山かけや一夜漬けで試験を乗り切ろうとすることと同で、勉強が身につくことはありません。もちろん、その能力は緊急避難的に使う上では、非常に重要なものではありますが。
●カンニングはいけません。
しかしながら、カンニングなどの不正行為で点数を稼ごうとすれば、それは明らかに許されることではありません。かつてのホリエモンも村上ファンドも、今回の東芝の経営陣も、このカンニングにあたる行為が問題なのだと言えます。さらに言えば、試験の採点に重要な役割を果たす、監査法人の責任も免れないと思うのですが。経営者は、新たな顧客を創造することにこだわり、その結果の当期利益は、自身への評価の結果として、甘んじて受け入れるしかないのです。そして、その結果を仔細に 分析し、マーケティングとイノベーションの能力を高め、大いなる利益を生む新たな市場を創出することにこだわるべきだと考えます。「社長、その利益確保は、何のためですか? 実力をごまかして、点数だけを稼ぐものではないですか?」と言える人が、東芝にはいなかったのか、それとも、言った人はみんな飛ばされたのかな。
Writer:橋向 博昭(中小企業診断士)平成27年8月25日
日本の葬儀費用
日本の葬儀費用
葬式(葬儀)とは、死者の往生、成仏を願って行われる葬儀式ですが、どのような形で行うにせよ、葬式が全く必要でない人は少ないと思います。日本は世界一葬儀費用の高い国と言われています。ちなみに、葬儀費用は、イギリスが12万円、ドイツが20万円、アメリカが44万円、韓国が37万円となっていいます。桁違いに高いのが日本で、葬儀費用の平均総額は、189万円(日本消費者協会調査)にもなります。なお、東京都生活文化局の葬儀に関する調査によると、寺院費用の平均は40~50万円とされています。
葬儀社
葬儀を行うにあたって、昔は家・地域が中心になって執り行われていましが、今は家・地域に代わって葬儀社が葬式のすべてを差配する時代になりました。近年、葬儀業に注目が集まっており、葬儀市場の規模は、年間1兆円6千億円と目されています。葬祭事業を行っている企業を大別すると、「専門葬儀社」「互助会」「JA・生協」「その他」に分けられます。葬儀全体の売り上げは、専門葬儀社40%強、互助会40%、JA・生協10%強となっています。日本人の平均寿命・死亡者数日本人の平均寿命は、2013年で、男80.21歳、女86.61歳で、今や世界一の長寿国となっています。一方、年間死亡者数は、2012年には125万人に達しており、2040年には166万人に達する見込みです。
葬儀業界の動向
葬儀業は、世界最速と言われる高齢化が進む中で、死亡者数・葬儀件数の増加が予想されており、今後も安定した需要が見込まれています。葬祭業は許認可制度ではないため、誰でも自由に新規参入できる業界です。このような状況下、他業界からの新規参入が相次いでおり、顧客獲得競争が激化し、競争原理が働き、葬儀費用の低下傾向が進んでいます。加えて、消費者間では葬儀の簡素化を希望する傾向が一段と強まっており、最近ではシンプル葬としての「家族葬」や「直葬」が増加傾向にあります。葬儀業者の料金体系は明瞭ではないと言われてきました。しかし、新興企業の参入は、これまで閉鎖的であった葬儀業界に変化を与え、他のサービス産業と同様に、料金体系の明瞭化を求める消費者ニーズに応えようとする動きが鮮明になってきています。
Writer:田原 光雄(行政書士)平成27年7月25日
最近のニュースから「事業承継」を考えてみます
お家騒動
今年の3月には家具販売会社のお家騒動について特集が組まれるほどに新聞紙上をにぎわせました。創業者が一旦は娘に後継を名指して身を引きましたが、低価格路線から会員制、高級路線へと長年をかけて作り上げた父親のビジネスモデルに対し、入りやすい店内の雰囲気と中級価格帯への移行を進めようとする娘の経営方針への反発から、再登板を目論んだようです。3月27日の株主総会の委任状争奪戦は61%の賛同を得て、娘が今後も社長として経営を任されることになりましたが、今度は“株は誰のものか”をめぐって法廷に舞台を移しての第2幕に入っています。
また、家具製造小売りの会社でも株式・財産の保有をめぐって、社長対母親と社長の兄弟の図式で裁判が行われました。その後和解に至りましたが、最近新聞に掲載された社長の半生に対し、母親が週刊誌で反論する騒動がありました。
老舗の和菓子屋では偽装問題で経営を交代した息子が家業から企業への転換を図りましたが、急な変革を嫌った旧経営陣が反撃に出て、圧倒的株式数により母親が新社長として就任することになりました。
布地製カバンを製造販売する会社は先代の経営者の死去に伴い、遺言をめぐって3人の兄弟の対立が表面化し、裁判で争った挙句、それぞれが近くに同業の店を構えることになりました。
一方、テレビ通販で有名な会社は潔く社長の座を息子に引き渡しました。今後、カリスマであった先代が若い経営者の手腕に口を出さずに見守っていくことができるか、試されることになります。
現経営者がその座を次世代に引き渡すことは大仕事です。だからこそ、社長の仕事は後継者を育成することであると言えるのです。
平成25年の総務省統計局の発表資料によりますと、日本人の平均寿命は男性80.21歳、女性86.61歳です。では健康でいられる年齢は、と言いますと、男性が71.19歳、女性は74.21歳です。
健康で聡明な判断力・洞察力・決断力をもつ経営者もいつか年を取り、難しい局面を迎えます。後継者の育成には10年を要すると言われています。そのときが来てからでは遅すぎます。スムーズな交代ができるよう、いまから、後継者の育成を考えてみませんか。
Writer:越地 文夫(中小企業診断士)平成27年6月25日
小さな企業の経営革新のすすめ
1年前の6月法制化されました小規模企業進行基本法(小規模基本法)にもとづき平成27年度は小さな企業に対する国の支援が強化されております。ここで中心となる支援機関は商工会議所と商工会になり、現在各所において「商工会議所・ 商工会の経営発達支援計画」が策定されております。中小企業庁で計画認定作業が進めており、本年度内に認定が終了する予定となっております。今後、地域の商工会議所・商工会の小さな企業様への伴走支援が始まり、新たな支援内容での活躍が期待されています。
小規模企業(商工業者:従業員数が5名以内、製造業では20名以内の商工業者)に対する支援が見直しされています。従来、中小企業としてひとくくりにされていたため、個人商店、飲食店などへは支援が行き届かない閉塞感がありました。 これを打ち砕いたのが昨年に続き実施されている「小規模事業者持続化補助金」でした。1人の個人商店でも応募できる内容で、最大100万円まで(条件付き)の規模で販売促進費が2/3補助されるものです。今年は昨年に比べ予算規模も250億円と2倍に拡大しております。平成27年度については第2次募集が5月27日に締め切られましたので、来年度の公募に備えていただいてもよろしいかと思います。「小規模事業者持続化補助金」では明確な経営革新の経営計画が必要となります。具体的には申請書を書く際に、経営革新としての経営計画と経営目標、アクションプランが求められており、これが重要な評価項目となります。これが簡単に書けないというお悩みの企業様が多いのが現状です。この補助金の記入内容を例に経営革新の計画策定のすすめ方を簡単に説明して行きましょう。全体の流れは以下の手順となります。
(1)消費者やお客様のニーズの変化と市場動向を把握する
(2)自社・自店の強みを把握して活用する
(3)経営方針(経営戦略)を立てる
(4)経営目標を明確にする
(5)経営目標を達成するための実行計画を立てる
これらの進めるときのポイントを以下で説明します。
1.消費者やお客様のニーズの変化と市場動向を把握する
経営方針を策定するとき、お客様(消費者や取引先)の長期的な変化(5~10年程度のスパン)に着目します。これは経営環境で最も大きな要因の変化に着目します。居酒屋だったら「家飲み」とか、食品だったら「ヘルシー」、周辺住民の高齢化、本物志向、ネット販売の増加などです。私が支援した企業はネット販売で売上拡大と利益拡大に精工しました。それを前提に「地域での望むべきお客様」を絞り込みます。例えば、今まで近隣のファミリー層を狙っていたが、近隣の住宅地の高齢化により団塊世代のシニア層をターゲットに設定し直す。そうするとお客様像が見えてきます。子供は既に社会人で外に出て、現在は定年の夫婦二人で人生の後半を楽しんでいる。年金もあり生活に不自由はしていないなど、ライフスタイルやニーズが見えてきます。お客様層が明確になったら、そのニーズを引き出すのはお客様と直接に接するのが毎日の小さな企業にとって簡単なことです。店舗などで直接対話しながら引き出せば良いのです。健康維持のため食事に気をつけている。孫が入学するので、お祝い会をしたいなど、具体的なニーズが引き出せます。一方、競争の状態の変化をとらえる必要があります。昼の食事に関しては、昔、そばや~始まり、ファミレス、今はコンビニからスーパーへと変わって来ています。内容も安いだけでは無く、地場野菜中心やヘルシーなど多様化しています。ニーズが多様化すれば大手がカバーできない、小さな商機があるはずです。以上で「お客様の特定」、「ニーズの把握」が出来るはずです。
2.自社・自店の強みを把握して活用する
日々の営業においてお客様の同業他社や異業種との比較の結果が売上につながります。比較の項目が強みとなります。意外と皆さんが気づいていない強みもありますので、ご家族や知人、お客様を含めて聞いてみる必要があります。お客様が選んでいただける強みを集め、整理してみる必要があります。例えば、スーパーに比べ商品の品揃いが多い、商品知識が豊富、特別注文も受けられる、お客様のことをよく知っている、配達が出来る、などです。これらの自社・自店を活用していくのです。活用するためには強みの源にたどり着くことがポイントとなります。
3.経営方針(経営戦略)を立てる
顧客の変化とニーズを機会として捉え、それに自社・自店の強みを組み込んでいくのが経営戦略となります。具体的には、市場のニーズや市場の動向と自社・自店の組み合わせとなります。例えば、地域の高齢化と働く女性の増加があるとすれば、 ヘルシー弁当の開発と宅配が一つの戦略となります。飲食店が弁当メニューの開発と近隣の受託と企業に宅配するという経営革新計画となります。この例の場合、戦略は以下の2点で構成されます。
(1)高齢者・女性向けのヘルシーランチメニューの開発
(2)弁当1個の宅配体制を構築する
4.経営目標を明確にする
経営方針が決まれば、経営目標が決まります。全体の経営目標と新規事業での目標が設定されることになります。例えば、1年後に5百円の弁当を日に30食、月40万円、年間で約500万円という売上増となります。店舗での20個の売上に対し、日に10個宅配をすると予約受付体制、バイクでの配達の体制が決まってきます。これって昔の「そば屋の出前」に似ています。
5.経営目標を達成するための実行計画を立てる
1から5が決まればやることは決まってきます。例えばヘルシーメニューの開発、材料調達、調理方法など。宅配体制も決まってきます。特に、新しい商品を知ってもらうための「販売促進」を行う必要があります。調理器具の導入、新聞チラシの作成と配布等がアイデアとして出てくると思います。確実に目標を達成できる条件を実行すれば、絵に描いた餅では無くなってきます。具体的な経営計画、経営革新計画となるのです。
あつぎみらい21ではこれから小規模事業者様向けの支援を強化して参ります。これが強いては地域の企業様が元気になる近道であると確信しております。みなさまも経営革新計画を作ってみて、来年度の小規模事業者持続化補助金に展開し てみてはいかがでしょうか。
Writer:小泉 誠二(中小企業診断士)平成27年5月26日
産業財産権と代理人(特許事務所)の選択の留意点
産業財産権とは?
産業財産権とは、特許権、実用新案権、意匠権および商標権をいう。発明、考案、意匠、商標を独占して実施することができ、第3者の使用を排除することができる権利(独占排他権)である。特許権とは、特許された発明(アイデア)をいう。実用新案権とは、出願した考案(物品の形状など)であり、特許権よりもハードルが低い小発明などに適する。意匠権とは、いわゆる、物品のデザインを保護するものである。商標権とは商品・サービスに使用するマークを保護するものである。特許権、実用新案権および意匠権は、出願時または登録時から、10年、20年など一定期間のみ権利が認められる。商標権は、更新により権利維持が可能である。
権利を取得するためには
上記4つの産業財産権を獲得するためには、特許庁への出願が前提となる。出願した産業財産権を登録するためには、特許庁による審査を経る必要がある。審査をパスすれば登録査定されるが、法的要件を満たさないと拒絶査定(実用新案権を除く)される。
代理人(特許事務所)の能力
特許出願および実用新案登録出願においては、出願段階の書類である「明細書」、「図面」および法的権利範囲を規定する「特許請求の範囲」の出来が重要である。通常は、代理人(特許事務所)に依頼する。出願段階はもとより、出願後の中間段階においても、代理人は、適宜、出願人(発明者)の意向を受け対応する。「明細書」、「図面」と「特許請求の範囲」の出来は、審査段階、さらには、権利範囲に大きく影響する。審査段階では、代理人と特許庁との間に、権利化の ための攻防戦が待っている。このとき、発明を的確に表現すると共に権利範囲を広く記載した内容かは、代理人の能力に左右される。すなわち、第1に権利化を可能にし、第2に権利範囲をいかに狭くしないようにできるかは、代理人の能力・才覚に左右される。代理人と出願人との相性も重要である。
代理人(特許事務所)の選択の留意点
代理人の選択の留意点として、
(1)発明に係る技術分野に明るい代理人(特許事務所)であること
(2)豊富な実績を有していること
(3)誠実・真摯な取組姿勢が伺われること
(1)(2)については、特許庁のサイトにアクセスし公開公報等に接することで、ある程度のチェックは可能である。(1)(3)については、代理人に直接会うことにより判断できる。
Writer:家護谷 正晴(中小企業診断士)平成27年4月26日
ボトムアップによる整理・整頓の進め方
中小企業経営者の悩み//整理整頓活動が継続しない
なぜ整理整頓なのか
整理・整頓が目指すゴールは、工場の経営と人・組織の同時成長を狙うことです。整理整頓はそのための手法の一つにすぎません。生産性を向上させ、今よりも多く稼ぐ、多く利益を出すきっかけをこの活動を通じてつかむことです。結果的に下記 の効果が期待できます。
・職場がすっきりする、綺麗になる ・活動を通じて社内コミュニケーションがよくなる ・改善のための気づきが醸成される
整理整頓の実施ポイント
(1)マネジメントがキー
経営者が確固たる信念を持って整理整頓が会社の土台であることを継続して説き続けること及び従業員が勇気をもって改善を進言することが鍵となります。
(2)タブー、例外は設けない
社長、工場長の指示で購入した生産資材であっても不要なものは不要として例外を設けずに廃棄することが肝要です。
(3)モデルで実施する
やる気のあるリーダの職場を先行実施させ、他の職場との温度差を生じさせます。これにより競争心が芽生え、全社活動として進めやすいことになります。
整理整頓の取組みが継続できない
改善指摘型から計画改善型へ
現場パトロールで不具合を指摘しそれに対して改善する「改善指摘型」が一般的に実施されています。しかしこのやり方では、言われたからやるという受け身の姿勢から脱皮できず、いつの間にかトーンダウンした活動に陥ります。そこでの提案は、部門計画を基にした「計画改善型」に変革させ、継続的改善を図るようにします。例えば3S推進会議に年間計画を提案し、その実施確認を月に一度、パトロールで確認します。自分達の計画、実行に対してのパトロール指摘であれば自らの課題として取組みやすいのではないでしょうか。自らが決めたゴールに向けて自らが取組む活動に移行させることです。
以上、現場指導の実際から得たものを紹介しました。
Writer:河西 良宗(元気な中小企業応援隊代表、相模共同受注グループSpace246会長)平成27年3月25日
知って便利なお金のノウハウ、「72の法則」を知ろう
「72の法則」ってなんだろう?
「72の法則」とは、資産運用において元本が2倍になる金利(年利複利利回り)と年数を求める法則です。式は 金利(%)×年数(年)=72 なのですが、このままだとちょっと難しいのでこれを変形しますと、72÷金利(%)=2倍になる年数(年)、72÷年数(年)=2倍になる金利(%)となります。
たとえば、元本を10年で2倍にしたいときの金利(年利複利利回り)は、72÷10(年)=7.2(%)となるのです。これって魔法の金利のことですね。
では試しにトヨタ自動車の株を2013年の8月に1株買っていたとします。同社の株は2013年8月2日の終値で1株6,430円でした。この1株に対して年間の配当が90円ありました。配当利回りは90円÷6,430円×100=1.4(%)です。配当分を同じ条件で追加投資に回すという条件付きですが、これを「72の法則」に当てはめると、72÷1.4(%)=51.4(年)で2倍になることが分かります。
お孫さんの生まれたお爺さんが未来の成人祝いのために「72の法則」を活用して資産運用、なんて話もあるかもしれません。
Writer:金崎 努(中小企業診断士)平成27年2月25日
建設会社の管理方法
はじめに
私は、建設会社を専門に指導や支援を行っています。そこで、常日頃感じていることは、中小建設業の多くが“どんぶり勘定”で、ちゃんとした管理を行っていないということです。管理をしない理由は、能力的にできないためや工事をするうえ で必要だと考えていないためなど様々あります。しかし、ちゃんと利益を出している建設会社は管理もしっかり行えています。そこで今回は、建設会社が行うべき管理会計をかいつまんで説明していきたいと思います。
工事原価管理
建設業は、一つひとつの工事は場所も、請負金額も、掛かる費用(工事原価)も異なります。工事内容だってまったく同じものはありません。ですから一つひとつの工事でどれだけ利益が取れたのか、取れなかったのかを見ていく必要があります。 そのためには、工事毎に請負額と掛かった費用(工事原価)を仕分けていかなければなりません。それができていないと“どんぶり勘定”となってしまいます。材料費・労務費・外注費・経費といった工事原価の要素ごとに仕分けられること、工事に紐付けることが難しい場合の取扱いなど、その建設会社の管理能力にあった仕組みを作って行くことが必要です。
受注見込管理
多くの建設会社は、毎月決まった量の工事が受注できるとは限りません。こんな現場があるからと引き合いをもらい、見積をして相手の予算と合えば受注できます。もちろん、競争相手と価格競争になるともあります。見積した工事全てが受注でき る訳ではありませんが、中には100%受注できるものもあります。それらの受注確度や受注見込時期などをしっかり管理していくと、営業のスタンスも変わり、受注量は比較的安定してきます。また、施工能力に合わせた受注の選別にもつながり利益 率の向上にもつながっていきます。
資金繰り管理
毎月決まった量の工事が受注できないのと同じく、毎月決まった量の工事が行える訳でもありません。ということは毎月入金される額も支払う額も変動してきます。入出金のサイトの長短やタイミングにもよりますが、入金額よりも支払額の方が多 い月もしばしば発生するのが一般的です。当然、手元に資金が無ければ支払うことはできませんが、支払手形を切っており、当座預金残高が足りないとなれば、倒産ということになってしまいます。そうならないためにも、月繰りや日繰りで資金繰 りの管理を行う必要があります。また、先々の資金の状況を見て、金融機関に借り入れを相談するだけでなく、入金を早めたり、支払を遅らせたりする段取りが必要です。
中小建設会社が行うべき管理はまだまだありますし、その管理方法や精度も会社ごとに違ってきます。特に、その会社の能力にあった仕組みを考えないと、導入したきりで運用ができなくなってしまいます。経営コンサルタントとしては、それら を見極めたうえで最適な方法を提案していくことが重要です。
Writer:加藤 仁史(中小企業診断士)平成27年1月25日
補助金審査に通る事業計画書の書き方
補助金獲得にチャレンジしよう!
年明け後の2月ごろに平成26年度補正予算が確定すると、創業補助金」ものづくり補助金」の募集開始が予想されます。最近の募集では、予算減少の反面、応募数増加で競争率が上がり、採択率は下がりつつあります。そこで、採択されるためのポイントである「審査に通る事業計画書」の書き方のコツをお話しします。ぜひ、補助金にチャレンジしてみて下さい。
補助金審査に通る事業計画書の書き方は?
職歴・資格を具体的に書く
審査員は、まず経営者のバックグラウンドに注目します。特に新規創業の場合は、過去の経験や資格を活かしたものであれば、成功の可能性が高いものと評価されます。できるだけ 具体的に前職までの業種、職務経験、資格を書きましょう。
事業のきっかけ・想いを明 確に書く
なぜ、その事業をやろうと思いついたのか、そして、何のためにその事業をやるのかをきちんと書くことが意外と大事です。この部分で審査員の納得と共感が得られれば有利になります。経営者の想いの強さが事業の成否を左右するからです。ぜひ、具体的エピソードや熱い想いを語って下さい。
市 場ニーズ・ターゲットを具体的に書く
いくら想いが強くても、客観的に市場を分析し、お客さんを具体的に想定できていないと、新しい事業はうまく行きません。市場やターゲットは余り広くするよりも、できるだけ絞りこんで明確に書くことが求められます。合わせて、ターゲットに向けた営業・広告宣伝の方法もできるだけ具体的に書くと良いでしょう。
独創性、差別化要素を明確に書く
補助金審査では、実現性だけでなく、独創性や新規性も大きな評価ポイントです。今までに世の中に全くないものでなくとも、新しい工夫で他と差別化をはかることが、新規事業の成功には必要になります。そして、独創的でリスクもある事業だからこそ、補助金交付に値するということです。
数字の根拠 、固有名詞など具体的に書く
事業計画書には売上高、利益、必要資金などの数値計画が必要です。大まかな数値だけでなく、できるだけその内訳や根拠の数値、説明などを加えることがポイントです。市場規模などのデータも調べられれば、出所とともに具体的な数値を示すことで事業計画書の客観性が高まります。また、販売先や仕入先、提携先などはまだ未確定でも、可能なら予定先として具体的社名まで書いた方が信憑性が伝わり、評価されます。
Writer:大西 俊太(資金調達コンサルタント/中小企業診断士)平成26年12月25日
事業承継 敷地にまつわる一つの課題
会社の敷地は誰のもの?
製造業の経営の場合、当然ながら工場には(ファブレスは別にして)敷地があります。さて、この敷地は誰のものでしょうか。経営者の多くは、日々の経営で特には意識して考えてはいないようです。それはそうですね。経営の基になるような事柄は、毎日、毎日考えるものではないでしょう。しかし、社長に何かがあって、事業承継の問題が発生した時には厄介なことになる場合があります。ケースによって考えてみましょう。
社長ひとりの所有となっている場合
法定相続人が複数いて、相続について何も手当てしていないとすると(このケースが多いのです)分割して相続することになります。先ずは、相続人全員による分割協議を行い、誰かの所有とする。そうならない時は分割相続。相続人全員が経営に協力的であれば、取り敢えず相続人から会社が賃貸借して工場の敷地とすることはできましょう。しかし非協力な人がいて、いずれは他人に譲渡したいとする時はどうしますか。実際、このケースがあるのです。
社長と他の人との共有となっている場合
例えば、社長と叔父さんとが共同出資で創業し、敷地も共有としている場合、社長の持ち分は相続、叔父さんの分はそのまま、となりさらに複雑な関係となります。このようなケースも実際にあるのです。
他人の土地を社長個人が賃貸借している場合
賃貸借契約の承継となります。だれが承継人となるか、これも協議の対象となりましょう。問題は、これを機会に地主から契約変更を求められる、つまり地代の値上げがある、とい うことです。このケースも実際にありました。
敷地が会社の所有となっている場合
これは経営が安定し最も好ましいのです。この場合の課題は株式の評価額です。敷地も会社の経営資産として評価されるので、経営が好調な場合株式の評価額が多額となります。社長の持ち分は50%を超えているでしょうから相続財産はその分多くなります。
では、どうしますか
以上述べたことは、社長に何かがあって急に承継問題が発生した場合、会社の敷地はどうなるか,ということです。ですから、そうならないように、今のうちから方策を講じて置くことです。敷地は会社の所有とする、後継候補者を決める、後継候補者に社長の株式持ち分を計画的に贈与する、等のことは行いましょう。敷地の所有には資金も必要となりますので、計画的に進めることになりましょう。
会社の敷地の所有についてはいろいろなケースがあります。ということは、とりもなおさず、例えば社歴30~40年前後の企業にあっては、創業時の苦労の歴史がしのばれる、ということではないでしょうか。苦労を”いしずえ”として、これからも経営の足腰を強くして行きましょう。
Writer:大塚 惣助(中小企業診断士)平成26年11月25日
ITを経営に生かすには
経営にITを活用するための前提
昨今、IT(情報技術)の影響力を抜きにしては、社会現象や経済状況を理解し分析 することはできなくなりました。経営にとって、このような進化したIT技術、Web技術さえ熟知していれば、すべて解決の道筋に乗るのでしょうか。経営者の方が感ずる躊躇する感覚は実は正しいのです。IT技術、Web技術に関する数々の情報は、現在の最高到達点を教えてくれているに過ぎません。ITを経営に活用するためには、IT技術やWeb技術の知識を知っているだけでは越えることができない山があります。そのことをまず知っておくことが必要です。更に、中小企業では企業によって、IT化を可能にする社内土壌の水準差もあります。
経営へのIT活用に必須なこと
IT化とは経営課題を解決する手段です。ITを導入・活用して効果を上げるためには、自社や自店の経営課題を自覚していることが必要です。経営課題の把握は自社、自店の小さな単体ソフトウェアの導入か、または中小規模のシステム構築であるかを問いません。導入するITの規模により自ずと精粗の差はありますが、以下のプロセス・手順を踏むことが望ましいのです。
(1)経営を行う目的や存在意義は何かを改めて問い直す。
(2)経営の現状分析を行う。(自社の強み、弱み分析など)
(3)自社や自店の経営課題を洗い出す。
(4)達成したいと思う目標を具体的に、できれば数字で固める。
(5)設定した目標に行き着く行動プランを紙に書く。
(6)目標達成のためにITをどう使うかを計画し、紙に書く。
(7)業者なり、外部の相談者を選定する。
大切なことは、きちんとしたIT化のプロセスを踏むことです。更に従業員や社員が、経営改善を最終目的とするIT導入に顔が向くようにし向けることも重要です。そのことも経営者の大事な役割です。経営者だけが技術に強くて、ひとりITに熱中しているとしたら、社員は冷めてしまうことがあるかもしれません。経営者は先頭に立つことが必要ですが同時に組織全体を巻き込んで進めることが大切です。ITとはツールであって、IT導入にはその前提として、プロセス・手順を踏むことをお勧めします。
Writer:大嶋 碩郎(ITコーディネーター/中小企業診断士)平成26年10月25日
営業とは「会社や売りたい商品の価値を伝えること」
売上を上げる第一歩は、会社の価値、商品の価値を売ること
仕事柄、営業やマーケティングの応援をすることが多いのですが、そこでよく感じるのは、意外に皆様がご自分の会社の価値、商品の価値に気づいておられないケースが多いことに気づきます。営業での新規開拓アプローチ(面談のアポイントどりや初回訪問の場面で)、商談の中でのセールストークの場面でも、自分の会社の価値、売り込みたい商品の価値を十分表現し、また要領よく伝える(売り込む)必要がありますが、それが出来ていないことが多く見受けられるのです。これは、ホームページやパンフレット、POP、展示会、DM(ダイレクトメール)などでの表現でも同様です。
会社の価値、商品の価値とは
「価値」とは、一言で言えば、「その会社と取引したい」、「その商品を買いたい」と思わせるものです。そして、その中身は、端的に言えば、「特徴」と「買い手が受ける メリット」です。「特徴」は、他と違っている点(マーケティング用語で言えば、差別化ポイント=ポジショニング)のことです。
会社の価値、商品の価値を要領よく伝える
あなたの会社や商品の価値を要領よく伝えないと相手はまず興味を持ってくれず先の説明に進めなかったり、価値を低く(安く)受け取られて高く売れない状況が生まれたりします。ダラダラと話さず、書かずに、まず興味を持ってもらうためには、特徴と買い手のメリットをよく考えて、それをベースに出来るだけ短い言葉にまとめた「キャッチコピーを作る」、「特徴を箇条書きにまとめる」ということが有効です。
具体的な事例として
ある「こんにゃく製造販売会社」の社長さんとお話しましたが、売上が伸び悩んでいるとのこと。お話を聞いてみると、創業が明治初期で、当社のこんにゃくは、国産のこんにゃくいも使用や、伝統製法で熟練を要する「バタ練製法」での製造にこだわり、そのこんにゃくの歯ごたえや味しみは抜群とのこと。これは、スーパーなどで販売されている「こんにゃく」と全く違った歯ごたえ、味しみの点で素晴らしいメリットを持っているものです。 そこで、アドバイスの1つとして、「創業明治○年、伝統のバタ練製法だから、歯ごたえ、味しみが違います」とのキャッチコピーを作成し、お客様にチラシやPOPで伝えることを提案することにしたのです。
Writer:上地 道男 (中小企業診断士) 平成26年9月25日
錯覚とビジネス
錯覚(英: illusion)とは、感覚器に異常がないのにもかかわらず、実際とは異なる知覚を得てしまう現象のことです。錯覚には様々な種類や定義がありますが、今回はビジネスに係る錯覚「プロスペクト理論」について紹介したいと思います。
プロスペクト理論とはカーネマンによって提唱された行動経済学の分野で、不確実性下における意思決定モデルを説明するものであります。この理論の特徴として、以下の3点が挙げられます。
参照点依存性
人間はある「参照点」を参考に損得を判断していて、参照点からの変化の度合いにより、利得や損失の感じ方も変わってくることです。例えば「100万円の株が70万円に値下がりした」事実に対して100万円で株を買った人は100万円が参照点になって、大損したと感じます。だいぶ前に60万円で株を買った人は、参照点が60万円になり、一度上がった株が少し下がったが、まだ利益は出ている、と感じます。居酒屋で、席が空くのを待つとき、店員さんが少し長めに言って、それよりも短い時間で案内する、というのがよくあります。「15分お待ちください」と言われると、参照点が15分になるので、10分で案内されると、何だか嬉しくなります。反対に「5分お待ちください」と言われると、参照点は5分になるので、10分で案内され ると、怒りの気持ちが出てきます。
感応度逓減性
損失・利益共に額が大きくなればなるほどその感覚が鈍ってくることです。例えば、同じ2,000円の値引きでも、12,000円が10,000円になる値引きに飛びつく人は多いが、72,000円が70,000円になる値引きに飛びつく人は少ない、といったことです。
損失回避性
同量の利得と損失とでは、損失の方を過大に評価し、特に損失を回避しようという動機が強く働くことをいいます。例えば消費税を税込み表示にするか税抜き価格にするか、税金を源泉徴収にするか申告制にするか、レジ袋利用者から追加金を取るかマイバッグ持参者を割引するか。
以上は、結果として支払う金額が同額であっても、心理的なハザードが異なってくる例として挙げられます。3番目の例では、レジ袋利用者から追加金を取った方が、マイバッグ持参者が増えます。
錯覚は、この他にもいろいろありますが、以上のように、人間は知覚に関する錯覚を起こす特性を持っています。そしてその錯覚が経済行動にも影響する、というのが「プロスペクト理論」です。
錯覚を悪用したものが「詐欺」です。悪用するのは犯罪ですが、例えば居酒屋の待ち時間の例のように、ビジネスにおいて、人間の錯覚を利用することは広く行われています。
皆様のビジネスにおかれましてもマーケティング手法として錯覚を利用することで、効果が上がることがあると思います。
Writer:入谷 和彦(システム監査人/中小企業診断士) 平成26年8月25日
小規模企業のIT活用
小規模企業の方が「ITの活用」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、ホームページの作成だと思います。では実際のところ小規模企業はどのようなことにITを活用されているのでしょう?
小規模企業のIT活用の現状
2013年版中小企業白書によると、自社ホームページの開設等、小規模事業者のIT導入は着実に進んでいます。一方、経営課題の解決のためにITを活用している、と回答した企業は少ないのが現状です。ITを導入していない企業は、理由として「導入効果が分からない」、「コスト負担面から」、「IT人材不足」などをあげています。
次に、経済産業省が主催する「中小企業IT経営力大賞*」を受賞した小規模企業56社がどのようにITを活用しているかを見てみたいと思います。
最も多いのは財務会計、販売管理、生産管理などの業務システムの導入事例で全体の45%を占ます。次いで多いのがホームページ関連であり、新規顧客の集客や会員管理等への活用事例が33%、ネットショップの事例が11%です。一概にホームページといっても、様々な用途に活用されていることが分かります。
小規模企業のIT活用
小規模企業は経営課題を解決するために積極的にITを活用すべきでしょう。現在は低価格なパッケージソフトやクラウドサービスが多数存在します。予算面や人材面などを考慮し、自社にぴったりのツールを選ぶ必要があります。ツール選びに悩む場合は、専門家に相談するのもよいと思います。
また昨今のネット販売の急速な普及の一方で、小規模企業はこの機会を十分に活かせていないのが現状です。
2014年度版白書によると、小規模事業者の半数以上の企業は自社のホームページを持っていません。ホームページを持っていても、製品販売・予約受け付けを行なっている企業は1割程度、ネットショップへの出店・出品している企業は1割を切っています。販路開拓という側面から、対応が急がれる分野でしょう。
ITは道具であり、その活用がポイントです。導入しただけでは効果は出ません。道具をうまく活用して不足する経営資源を補い最大限の効果を発揮させましょう。
*経済産業省が主催する表彰制度。優れたIT経営を実現し、他の中小企業がIT経営に取り組む際の参考となるような中小企業や組織に贈られる。
Writer:岩崎 彰吾(中小企業診断士・ITコーディネーター) 平成26年7月26日
専門用語を使わないマーケティングのハナシ。(第10回)
その10 規制緩和は追い風? 規制が生み出すイノベーション。
TPPや農協改革など、いまの政府は経済再生のために、これまで積み上げてきた日本の産業構造を組み直そうと躍起になっています。国レベル主導で大きな変革が生まれるときは、起業や新分野進出の扉が開くチャンスが回ってきます。しかしながら、大きな改革は同時に多くのプレーヤーや大企業の参入を招き単純な力勝負になることも。
今回はその「ちょっと前」にスポットを当てます。
◇ ◇ ◇
八百長問題 大相撲を揺るがしたシステムの不備
さて、長い間日本人横綱が不在となり、両国の国技館には32枚の優勝額すべてが外国人力士よるものとなった日本の国技「大相撲」からネタを拾いました。
大相撲は日本の国技として長い間に昇進の仕組みなどのシステムが出来上がったものです。相撲の目指すところといえば、元来「神事」であり、心技体の完成した存在を横綱とし、それを目指して日々精進することがすべてのはずでした。
ところが十両力士による星の売買が行われ、八百長問題としてまだまだ記憶に刻まれている方も多いと思います。本来のスポーツ・神事としての競技が汚されてしまいました。大相撲は十両と幕下では待遇が大きくちがいます。収入だけでなく部屋の雑用、個室の有無、移動手段、食事まで多岐にわたっており、「十両と幕下は天地の差」と表現されるほど徹底されています。
力士がこれを守る手段を「実力」ではなく「お金」を決済手段にしたところが、八百長問題の発端となりました。困りごとをビジネスに変えるという意味では、ビジネスの王道なのですが、残念ながら明らかに相撲道の主旨に反しています。
スキマから生まれるビジネスチャンス
起業家の皆さんには、違う世界の話と映るかもしれませんが、この考え方は大きな下請け産業構造の中や、規制の大きい業界の中にもあてはめる事が出来ます。世の中の規制や業界慣習に潜む利害のゆがみを理解すれば、そこに中小企業が生きていく小さな市場を見つけたり、大きなビジネスを生むチャンスとすることも出来るのです。それは大きな格差が生じているところに必ず起きる「ビジネスギャップ」です。
その両者を取り持つサービスや製品を持ち込めば、必然と市場がうまれます。大きなものでは規制という障壁の業界から出た、発泡酒や第三のビールは税制という、大きな障壁を逆手にとりました。
もともと租税を回避しようとして、成分を変えながらも風味をビールに近づける代替品として販売した物ですが、デフレの環境が追い風となり消費者に受け入れられました。いまでは発泡酒と第三のビールを併せビール系飲料の50%というシェアになり、新たな市場が確立されました。
小さなものだと、チケットショップの新幹線回数券のバラ売りなどはその典型です。小さな商圏でありながら、普通運賃との差額が大きく、確実なニーズが見込めるため、大都市圏の駅周辺には小さな店舗が乱立しています。
◇ ◇ ◇
さて今回は、イノベーションは自ら起こすもの。大きな流れにのまれることなく、むしろ環境の隙間を突いて、独自のアイディアと戦略を持つ事が、ビジネスを起こすチャンスになると言う事が分かったでしょうか?
皆さんのビジネスも、世の中に追随するだけでは主導権を握る事はできません。市場の変化にが衰退の始まりにならない様、存分に知恵を絞ってイノベーションを起こしましょう!
ビジネスは柔軟に!まさしく「上善水の如し」ですね。また、面白いビジネス視点を見つけたら配信します。お楽しみに!
<参考>
内閣府 「規制改革会議」
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/
日本大相撲協会
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/
Writer:越伊豫田 竜二(中小企業診断士) 平成26年 6月25日
経営の落とし穴
外からみると順風満帆に成長発展しているように見える企業でも、それまでには幾度もの失敗を乗り越えてきているのです。しかし残念ながらそうした困難を乗り越えられずに倒産した企業も少なくありません。そこで今回は、経営の落とし穴というテーマで、陥り易い失敗を考えてみましょう。
1.見積りが甘い
仕事欲しさに見積価格を安く提示してしまうケースや、経験のない分野の仕事を受注したため原価の積算を見誤り大幅な赤字を出してしまうことがあります。こうしたケースは建設業や製造業で多く見受けられますが、たった数パーセントの読み違いでもロッドの大きい仕事でのミスは、資金力の弱い企業にとっては大きな資金ショートを招くことになります。新しい仕事は一度立ち止まり冷静に採算を見極めましょう。
2.仕事の範囲が不明瞭
中小企業の商取引では契約書を取り交わすという習慣は少ないため何か問題が起きると責任の所在や範囲が曖昧になります。例えば、お客様からのクレーム処理、取り決めのなかった追加工事、不良品や欠品が出た場合の損害賠償等、何か問題が起きると、言った言わないの揉め事になります。こうしたリスクの対応としては契約を交わすのがベストですがそれが難しい場合は、想定できる曖昧な点を洗い出し簡単な覚書きを交わしましょう。
3.売掛金の貸倒れ
信用取引(掛取引)で何が怖いかといえば、売ったお金がもらえない、いわゆる「貸倒れ」です。場合によってはたった1回の貸倒れで倒産の危機にさらされることもあります。そこで貸倒れを減らすため、次のような対策を図りましょう。
・一定の与信限度額を設ける
・売掛金の回収サイトは出来るだけ短くする
・売上(受注)が急激に増えたときは疑ってみる
・長いお付き合いの企業であっても安心はしない
4.知的財産権を守る
知的財産権には、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権などがあります。こうした権利の存在を知らずに事業をしたことにより他社から損害賠償を負うことがあります。また逆のケースとして、自社の優れたアイデアやノウハウが他社に真似されてしまい損害を被ることもあります。こうしたことを未然に防ぐために、知的財産権を独占的に使用できる権利を国に出願することができます。詳しいことは、知的財産権の専門家である弁理士に相談すると良いでしょう。
最後になりますが、経営の落とし穴である「まさか」の事態を避けるためには、様々な仮説を立て自社の不安要素を取り除くことを怠らないことがポイントです。
Writer:猪熊 正美(税理士) 平成26年 5月25日
おもてなしの心 店への活かし方
1.お客様の心理
みなさんはどのような店で買い物をしたいですか?
自分が気に入ったものを、気持ちよく買える店が一番でしょう。気持ちよくとなれば、多少高くても買ってしまったり、本当は違うものを買いたいのに、他の物まで買ってしまった経験がありませんか。私は、あります。そうです。人は無意識に自分にとって気持ち良い店を選んで買い物をしているのです。
2.「空間」と「雰囲気」
どうやって店を選んでいるのか、掘り下げてみましょう。
まず、店に入ったところをイメージしてください。店に足を踏み入れると陳列した商品と共にプライスカードやPOP等が見え、「いらっしゃいませ」の挨拶から接客が始まります。店は、見えるものによって構成されている「空間」と、接客、BGMなど見えないものによる「雰囲気」からなっています。私たち客は、この「空間」と「雰囲気」から、自分にとってきもち良い店か違うかを瞬時に読み取っているのです。この一瞬で「違う」と感じると、もうアウトです。
3.「選ばれる店」と「おもてなし」
「気持ち良い店=選ばれる店」とはどのような店でしょうか。
初めに述べたようにお客様はわがままです。客である「私」を大切にしている、店に来てくれた感謝の気持ちがある、「私」が気に入ったものに巡り合えるようにしてくれている、等々店からもてなされている状態です。この「空間」と「雰囲気」に、お客様を大切にしている、気遣っているなどの、「おもてなしの心」が表れているか否かで判断しているのです。
4.お客様視点の重要性
一瞬を逃さないためにはどうしたらよいのでしょうか。
先ずは、自分の店の中を徹底的にお客様の目線になって見直してみましょう。自分で解らなければどうぞ、第3者、特に感性鋭い女性に見てもらって下さい。そこに、お客様を大切に思うおもてなしの心が見えていれば、あなたの店にはファンがついているはずです。「だって忙しくて、」とか、「面倒くさいから」とか、言い訳することなくお客様を迎える姿勢をアピール出来ているでしょうか。
5.店頭の役割
自分の店を少し離れたところからも見て下さい。お客様にアピール出来る店頭になっていますか?店頭は、単なる「通行人」を「お客様」に変える大事な所です。その事を意識しておもてなしの気持ちを作り込まなくてはいけません。ここが作り込めていないと、お客様を振り向かせる事は出来ません。
ここまで述べた「おもてなしの心」を、どのように店舗に活かして行けば良いのかについて、5月21日と、7月22日に海老名商工会議所の、経営セミナーで話をさせて頂くこととなりました。利益につながる“おもてなし”とは何か、店でどのように表現したら良いのかなど、具体的な事例を交えながら話しをする予定です。
http://www.ecci.or.jp/htdocs/
Writer:伊藤 裕美子(中小企業診断士) 平成26年 4月25日