NPOあつぎみらい21の「かながわ Business Network」 2024年6月号 Vol.162

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  NPOあつぎみらい21の「かながわBusiness Network」 
                2024年6月号 Vol.162
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こんにちは、NPOあつぎみらい21「かながわ Business Network」
編集部です。 
毎月1回、メールマガジンを通じて皆さまの経営に役立つ情報をお届けして
参りますので、どうぞ宜しくお付き合いください。
 
やっと梅雨入りしましたが、雨が降りませんね。北半球は灼熱の夏が始まり、
ニュージーランドの山では雪不足。もうこれが常態だと思わなければいけな
いようです。
 
それでは、今号の内容です。
1.<経営講座> ■ 【中小企業における知的財産について】
2.<活動報告> ■ 【令和6年度の活動概要】
3.<経営情報> ■ 【各種セミナー情報】
 
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1.<経営講座> 【中小企業における知的財産について】
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1.はじめに
 日本企業の99.7%を占める中小企業は、 イノベーションの源泉として、
また地 域経済活性化の担い手として重要な存在である。 資源に乏しく人口
減少下にある 日本が、知的財産立国として技術や知恵を強みとした経済活
性化を図るためには、 中小企業の優れた技術やアイデアを知的財産(以下
「知財」という)として積極的に活用し、収益に結びつけ、企業成長を図る
ことが求められる。 また、知財は中小企業の存続を左右する武器にもなれ
ば、致命的リスクにもなる。
  しかし、中小企業に於いて知財が十分活用されているとは言い難い。その
要因として、知財取得コストが目に見える一方、自社の経営や収益に知財が
どう貢献するかが見えにくいことがあると思われる。  そこで、本稿で
は、知財活動と中小企業経営の関わり、知財活動持つ意義、またノウハウの
効用と不正競争防止法についても言及する。
 
2.中小企業の知財活動の現状と課題
 特許庁の調査によれば、特許出願件数は厳しい経済状況を反映し、全体の
出願件数が漸減する中、中小企業による出願は2011年以降増加傾向となっ
ている。 しかし、日本人特許出願に中小企業が占める割合はわずか12%程
度と、他の先進国(米国:約25%、韓国:約15%)と比し、低さが目立
つ。 企業数の99.7%を中小企業が占めることを考えれば、出願件数・出
願者数ともに十分ではなく、新たに知財活動に取り組む必要が高いと考えら
れる。
 一方、アンケート調査によると、知財の専任担当者を置いている中小企業
はわずか15%程度、また、経営者・幹部自身が知財活動を担当しているケー
スが多く(約36%)、知財部門が担当する中小企業はわずか3.7% であっ
た。さらに、①中小企業の知財意識が低いこと、②知財に関わる人材育成が
進んでいないこと、③知財に関する方針や制度整備が遅れていることなど、
中小企業における知財活動の実施体制の弱さが調査報告に指摘されている。
 
3.知財活用には多様な効果がある
(1)特許保有企業は業績好調
 特許権保有の有無と企業業績の関係をみると、保有中小企業の売上高営業
利益率は、非保有中小企業の約2倍もあり、大企業(特許権保有・未保有含
む)よりも高い。また、従業員一人当たり営業利益においても、保有中小企
業の方が大幅に高く特許権保有企業の業績が優れているという報告がある。
 
 
(2)副次的効果の活用
 中小企業が知財活動を行う目的と効果をみると、「模倣品排除」や「市場
独占」という知財の本来的機能を積極的に活用しようとする高い意欲がうか
がえる反面、「市場独占」の達成度は低く、 中小企業が知財により市場独
占を目指すことは実際には容易ではないことがわかる。他方で、「信用力を
得る」点は目的及び効果とも高く、また、当初の目的に比して、「対外的ア
ピール」、「新規顧客の開拓」、「事業の幅を広げる」効果が高いなど、事
業展開に貢献する知財活動の副次的効果がより強く働いていることが報告さ
れている。さらに、知財活動の効果については、約4社に1社が知財により
資金調達に何らかのメリット(金利優遇など)があったとする報告や、社員
のモチベーション向上に活用されているとの考えもある。
(3)中核事業を長く継続するために
 特許権の本来的機能は、他者の参入を排除し、独占的な利益をあげること
である。しかし、これは、知財権を他者に適切に権利行使できてはじめて有
効な効果を生む。当該効果を実感するためには、①権利行使しやすく、強い
権利範囲を有する特許権を取得するとともに、②権利行使が困難な製造技術
についてはノウハウとして保護するなどのオープンクローズ戦略を構築する
ことが肝要であり、また、継続的な研究開発の成果を知財権として保護する
ことが、事業の長期継続には重要である。
 
4.知財戦略は特許を取るだけでない(オープンクローズ戦略)
 自社の技術に関して単に特許取得を目指すだけでなく、出願公開などを通
じて技術が開示されることを踏まえ、守るべき技術をしっかり見極めてブラ
ックボックス化(ノウハウとして保有)する方法も組み合わせた戦略を採る
べきである。
 ノウハウとは、専門的な知識、技術、手法や情報という意味である。 中
小企業にとって知財の権利化はコスト負担の割にリスクが大きく、リターン
が見えない。従って、知財戦略の意義は理解しても実施には懐疑的である。
知財戦略は特許取得がゴールではない、中核事業を支える技術を確実に保有
し、更新できれば良い訳である。その手段の一つがノウハウとしての保有で
ある。
 技術的なノウハウのなかで、新しく優れたもので発明に該当するものは、
特許を出願すれば特許権を得ることができる。特許出願して特許権となれ
ば、他社の実施を禁止する独占権を得られるが、審査があり、すべての出願
発明が特許として認められるわけではない。また、特許出願をすればその発
明は公開されるので、他社がその内容を知ることとなる。一方、ノウハウと
して保有し、秘密保持体制を十分に強固にすれば社外に漏れることはない
が、一度でも社外に秘密が漏れると、模倣を止めることは出来ず自社製品の
模倣品が市場に溢れる原因になってしまう。
 
5.ノウハウとして保有すべきか特許で権利化すべきか
 発明やアイデアをノウハウとして守るべきか特許を取って守るべきか、次
の判断基準で考えるべきである。
  1.特許の権利化が可能であるか、
   (技術内容に新規性、独自性があるか)
  2.特許侵害を容易に発見できるか、
   (製品から特許にすべき発明やアイデアの侵害が容易に発見できるか)
  3.ノウハウ管理ができそうか、
   (営業秘密の管理体制が自社で整っているか)
  4.他社が考え付くなら、早いもの勝ち
   (同業他社であれば何れ考え付くと思われる)
  5.ノウハウが見破られる可能性があるか、
   (同業他社が製品を分析することで技術ノウハウが判明するか)
6.特許取得後の見通しは明るいか、
   (別な技術で容易に実現できるか)
  
6.不正競争防止法と営業秘密について
 企業秘密とは、一般的には企業活動に関する経済的価値を持つ情報で、公
表されていないものを指し、法的保護の有無を問わずさまざまな情報を指す
のに対し、営業秘密はそのうち法的保護を要する情報であると認識されてい
る。この営業秘密を保護すのが、不正競争防止法である。
 不正競争防止法とは、企業間の不適切な競争を防ぐための法律である。 
他人の商標などを使って混同させる行為や、不正な手段で取得した営業秘密
を利用する行為などを禁じている。 
 技術ノウハウなどの営業秘密が不正競争防止法で保護されるための要件
は、①秘密として管理されていること(秘密管理性)、②事業活動に有用な
技術上、営業上の情報であること(有用性)、③公然と知られていないこと
(非公知性)を有していることが必要となる。
 
7.まとめ
 
1.知財〈知的財産)は単に特許だけでなく、企業活動において常に存在し、
  意識  して経営されるべきである。
2.知財は中小企業にとってその存在を左右する武器にもなるが、致命的な
  リスクにもなる。
3.特に、製造業にあっては技術ノウハウは重要な知財であり権利化する
  か、営業秘密として管理するか判断されるべきである。
4.技術ノウハウたる、営業秘密を守る法律が不正競争防止法である。
 
 
 
<参考資料・出典>
 
1. 中小企業における知的財産と経営の関係について
  中小企業研究センター
  https://www.chukiken.or.jp/wp-content/uploads/2021/11/2014_03.pdf     
2. 中小企業における知的財産・ノウハウに関する現状と課題   中小企業庁
   https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/chizaitorihiki/2020/200722chizaitorihiki04.pdf
3. ノウハウにすべきか特許を取るべきか判断基準の解説      知育特許事務所
  https://chizai-media.com/know-how-patents/
4. 営業秘密を守り活用する(不正競争防止法に関する資料)   経済産業省
  https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/trade-secret.html
5. 特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)
  知財に関する各種情報が収録されており、無料で検索・閲覧サービスが提供
  されている   工業所有権情報・研修館
  https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
6. 特許庁の中小企業向け情報   特許庁
  http://www.jpo.go.jp/sesaku/chusho/index.html
 
 
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 Writer:石崎洋之(産学コーディネータ) Mail::NAD02576@nifty.com
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<活動報告> ■ 【令和6年度の活動概要】
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▼地域での活動と会員の生活を豊かに
 
 メールマガジンの読者のみなさま、いつも読んでいただきまことにありが
とうございます。今週に入り梅雨入りとなりジメジメと暑いうっとうしい毎
日が続いておりますがみなさまお元気でいらっしゃいますでしょうか。
 さて、当NPOあつぎみらい21は4月より令和6年度に入り、前期収支決
算報告と新年度事業計画を作成し、5月15日の総会で承認されました。新年
度の事業計画の概要をご紹介したいと思います。当NPOの事業は会費に基
づく自主事業と行政や民間からの委託事業に分けられます。
 
以下概略を紹介させていただきます。
 
1. 人材育成に関する事業
セミナーなどを主体とする事業で中小企業様の経営力向上を目指していま
す。また地域の個人や会員のスキルを向上や知識を豊かにするためのセミナ
ーなども幅広く開催しております。コロナ禍以降、オンラインを上手く併用
しながら進めています。
 
2. 活力あるまちづくり支援事業
 活力あるまちづくりのために「緑のカーテン事業」を実施しています。こ
れはゴーヤーの種を中小企業様に無料配布して緑のカーテンで省エネルギー
を進めるとともに、社員が参加して種まきから水やりと世話をすることによ
り企業活性化の一助にさせていただいております。実ったゴーヤーは社員さ
んで食べていただこうと社員の協力の輪が広がります。この事業はもう10年
以上続いております。
 もう一方は会員の自主的勉強会である商店街支援事業は活力ある商店街様
の見学の実施、製造業支援事業はテーマを設けて活力ある企業の見学会をす
ることにより、活力あるまちづくりのためのスキルアップを進めています。
 
3. 地域活性化支援事業
 こちらは市町村や商工会議所・商工会などからの委託事業になります。内
容的に相談員派遣が主となりますが、景気動向調査なども委託されていま
す。こちらは収益事業としてNPOの運営の柱となるものです。
 
4. 組織運営
 NPOの運営はボランティア・無報酬では回りません。会費を原資として
活動に対して交通費などの費用も発生しますし、報酬も必要となります、
収益事業のプロジェクト管理、例会の開催、本メールマガジンの発行、ホー
ムページの管理運営と多岐にわたります。
 
 事業全体を紹介させていただきましたが、今、重要となっているのが会員
個人としての「充実した人生」、社会貢献をしながら如何に過ごすかと言う
ことになって来ました。地域の活性化を進めつつ各会員の充実した人生との
バランスを取りながら、当年度の事業を推進したいと考えております。
 
令和6年6月
 
NPOあつぎみらい21 理事長 小泉誠二
 
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2.<経営情報> ■ 【各種セミナー情報】
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▼ その他のセミナー・講演情報
 
厚木商工会議所 セミナー/イベントのお知らせ
 http://www.atsugicci.or.jp/category/seminar/
 
相模原市産業振興財団 セミナー/イベントのお知らせ
 http://www.ssz.or.jp/event
 
川崎市産業振興財団 セミナー/イベントのお知らせ
 http://www.kawasaki-net.ne.jp/seminar.html
 
横浜商工会議所 セミナー・講習会のご案内 
 http://www.yokohama-cci.or.jp/event/
 
川崎商工会議所 セミナー・講演会スケジュール
 http://www.kawasaki-cci.or.jp/event/index.html
 
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■ 編集後記
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先日、友人たちとベトナムへ旅行に行ってまいりました。ある調査によると、
いま最もお得な旅行先はベトナムらしいです。確かに、ホテルも食事もクオ
リティはそこそこ高く、お値段も手頃で大いにエンジョイできました。
因みに、4番目にお得なのが日本だそうです。これってどうなんですかね。
では、次回のメルマガもお楽しみに。
 
本メルマガは、GoogleGroupで発行しております。GoogleGroupは本来
メーリングリスト機能のサービスですが、読者の投稿はできません。
メンバも当然非公開としています。ご安心ください。
 
発行者:特定非営利活動法人 NPOあつぎみらい21
編集長:東 新(NPOあつぎみらい21事務局長)
Website: http://www.atsugimirai21.org/ 
E-mail: mailmag@atsugimirai21.org
 
編集担当:橋向 博昭
E-mail: hiro@at-bridge.com
Website: http://at-bridge.com
 
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